ドラクエ1をプレイしていて、ローラ姫を助け出した後にふと魔が差したことはありませんか。このままお城に帰らずに姫を連れたまま旅を続けたらどうなるんだろうという素朴な疑問です。通常ならすぐにラダトーム城へ送り届けるのが勇者の務めですが、あえて寄り道をして宿屋に泊まったときのセリフの変化や竜王との対決シーン、そして感動のエンディングがどのように変わるのか気になりますよね。ファミコン版からリメイク版に至るまで語り継がれるこのプレイスタイルは、単なるバグではなく開発者の遊び心が詰まった隠し要素でもあります。今回はそんな禁断の旅路について、実際にどのような変化が起こるのかを詳しくご紹介していきましょう。

- 宿屋に泊まった際に発生する有名なセリフの変化について
- 竜王との決戦やエンディングにおける演出の違いについて
- 王女の愛がない状態でロトの印を見つけるための攻略情報
- リメイク版とオリジナル版での挙動の違いや小ネタ
ドラクエ1で姫を連れたまま旅するイベントの変化
通常プレイでは見られない、姫を連れたままの状態だからこそ楽しめる特別なイベントや住人たちの反応について見ていきましょう。ちょっとしたイタズラ心のつもりが、意外なほど細かく作り込まれていることに驚かされます。
宿屋のセリフが「おたのしみ」に変わる条件
ドラクエ1における「姫連れ回し」プレイで最も有名、かつ多くのプレイヤーが一度は見てみたいと思うのが宿屋でのイベントですよね。ローラ姫を抱きかかえた状態で宿屋に宿泊すると、翌朝の宿屋の主人のセリフが劇的に変化します。
通常であれば「ゆうべは よく おやすみでしたね」と労われるところですが、姫がいる場合は「ゆうべは おたのしみでしたね」という、なんとも意味深な言葉をかけられるのです。このたった一行のセリフを見るために、わざわざ姫を連れ回す勇者も多いのではないでしょうか。
このセリフは、リムルダールやメルキドなど、どこの町の宿屋に泊まっても発生します。宿屋の主人たちは、世界共通のネットワークで勇者の「おたのしみ」を共有しているのかもしれませんね。
この表現は、今のゲームではなかなか見られない昭和の時代特有の牧歌的な艶笑ジョークとして、ファンの間で長く語り草になっています。具体的になにがお楽しみだったのかは、プレイヤーの想像にお任せします、という開発者の粋な計らいを感じますね。
街ごとの住人の反応とラダトーム城の例外
では、宿屋以外の街の人々はどうでしょうか。武器屋の親父や、町中を歩いている人々に話しかけても、基本的には姫を連れていることに対する特別な反応はありません。背中に王女を背負ったまま「はがねのつるぎ」を値切り交渉している姿を想像すると、かなりシュールな光景ですよね。
ただし、唯一の例外が存在します。それがスタート地点であるラダトーム城の1階にいる住人たちです。
ラダトーム城の1階だけは、「王女救出ミッション中」という特別な空気が流れており、住人たちが「さあ 早く 王様のもとへ!」と勇者を急かしてきます。
一歩城を出れば誰も気にしないのに、城に入った瞬間だけ世界が「王女帰還待ち」のモードに切り替わる。このギャップもまた、レトロゲームならではの面白さだと思います。
姫を道具として使うと発生する会話ループ
システム上、連れているローラ姫はアイテムのような扱いになっている部分があります。そこで、ついつい試したくなるのが「どうぐ」コマンドとして姫を選択したり、話しかけたりすることです。
フィールドや町中で姫に話しかけると、「よし 離れていても 私の心は いつも あなたと共にありますわ」といった健気なセリフが返ってきます。さらに、「あなたは ローラのことを 思ってくださいますか」という問いかけに対して、あえて「いいえ」を選んでみるとどうなるでしょうか。
「そんな ひどい……」と悲しまれますが、会話はそこで終わり、また同じ問いかけに戻ります。つまり、勇者が「はい」と答えるまで永遠に許してくれない無限ループに突入するのです。通常はお城でしか聞けない会話ですが、魔物のうろつく危険なフィールドでこのやり取りをしていると、「もう逃げられない」という運命的な重さを感じてしまいますね。
竜王のセリフは姫連れで変化するのか検証
物語のクライマックス、諸悪の根源である竜王との対決。ここで姫を連れていると、何か劇的な変化が起きるのではないかと期待してしまいますよね。「人質を連れてくるとは卑怯な!」とか「娘を返せ!」といった反応があるかも、と。
しかし、私の知る限り、オリジナル版(FC版)においては竜王のセリフに大きな変化はありません。
竜王はあくまで勇者に対して「世界の半分をやろう」と持ちかけてきます。もしここで「はい」を選んでしまったら、勇者の魂だけでなく、背負っているローラ姫ごと闇の世界に売り渡すことになってしまう……。そう考えると、通常のプレイよりもさらに背徳的で恐ろしい選択を迫られていることになります。竜王が姫の存在をスルーすることで、かえってこの状況の異様さが際立っているように感じます。
抱きかかえグラフィックと戦闘中の扱い
ビジュアル面での楽しみについても触れておきましょう。姫を救出した後は、勇者のグラフィックが「お姫様抱っこ(あるいは背負っている状態)」に変化します。このドット絵がまた愛らしいんですよね。
ただ、残念ながら戦闘画面になると姫の姿は消えてしまいます。戦闘に参加してくれるわけでもなければ、盾になってくれるわけでもありません。システム上は勇者一人の戦いです。
戦闘中に姫が表示されないからといって、安心はできません。プレイヤーの心情としては「激しい戦闘中に姫を落としたりしないか」「ブレス攻撃で姫もダメージを受けていないか」と気が気じゃないはずです。
この「守るべき存在を背負いながら戦う」という脳内補完(ロールプレイ)こそが、連れ回しプレイ最大のスリルであり醍醐味だと言えるでしょう。
ドラクエ1で姫を連れたままクリアする攻略と結末

ここからは、実際に姫を連れた状態でゲームをクリアするための具体的な攻略ポイントと、その先に待っているエンディングの変化について解説します。少しマニアックな仕様にも触れていきますよ。
王女の愛なしでロトの印を探す攻略ルート
姫を連れ回すプレイにおける最大の難関は、重要アイテム「王女の愛」が入手できないことです。通常であれば、このアイテムを使うことで「ラダトーム城までの方角と距離」を知ることができ、それをヒントに毒の沼地にある「ロトの印」を探し出します。
しかし、姫を連れ回している=城に帰っていないため、当然「王女の愛」はもらえません。つまり、ノーヒントで広大な毒の沼地からたった1マスの正解を見つけ出さなければならないのです。
| 目標物 | 大まかな場所 | 王女の愛なしでの攻略法 |
|---|---|---|
| ロトの印 | メルキド南の毒の沼地 | 攻略サイト等の座標地図を参考にするか、沼地をくまなく歩く「ローラー作戦」を行う必要があります。 |
現代であれば攻略情報を見て「メルキドから南へ○歩、東へ○歩」と調べられますが、当時は自力で探し当てるしかありませんでした。この「王女の愛なしクリア」こそ、真の勇者が挑むべきハードモードと言えるかもしれません。
エンディングでの姫の瞬間移動バグを解説
苦難の末に竜王を倒し、いよいよエンディングです。ここで見られる現象は、レトロゲームファンなら思わずニヤリとしてしまうものです。
通常、エンディングでは王様の隣にローラ姫が立っていて、そこから会話が始まります。しかし、姫を連れたままクリアすると、勇者が王様の前に立った瞬間、あるいは会話が始まる直前に、勇者の背後にいたはずの姫が、一瞬にして王様の隣の定位置へとワープ(瞬間移動)します。
これはバグというよりは、プログラムの処理上の都合でしょう。「姫が勇者の横から離れて王様の元へ歩く」という専用のアニメーションを作る容量がなかったため、強制的に座標を移動させて整合性を取っているのだと思われます。この強引な処理が、「ああ、昔のゲームだなあ」という愛おしさを感じさせてくれます。
旅立ちの展開が通常よりドラマチックな理由
エンディングのラスト、勇者が王位を継ぐことを断り、自分の国を探す旅に出るシーン。ここでローラ姫との会話が発生しますが、連れ回しプレイの場合、ここでのナラティブ(物語性)が非常にスムーズになります。
通常プレイだと、城で待っていた姫が「私も連れて行って!」と急に追いかけてくる形になります。しかし、連れ回しプレイの場合は違います。竜王との死闘も含め、ずっと一緒に旅をしてきたわけですから、「私も行くのが当然ですよね?」という雰囲気になるのです。
王様が「古い言い伝えのままであった!」と言うシーンも、連れ回し状態だと「姫と一緒に旅立つことまで予言されていたのか?」と深読みでき、より運命的な結びつきを感じられます。
個人的には、この連れ回しルートこそが、二人の絆を最も強く描いた「真のエンディング」のような気がしてなりません。
リメイク版とFC版での違いや修正点
ここまで主にファミコン版(FC版)の挙動についてお話ししてきましたが、スーパーファミコン(SFC)版や、スマホ、Switchなどのリメイク版ではどうなっているのでしょうか。
リメイク版でも基本的に「姫連れ回し」は可能ですし、宿屋での「ゆうべはおたのしみでしたね」も健在です。ただし、グラフィックの向上により、エンディングでの「瞬間移動」が修正され、自然な演出に変更されている場合もあります。
また、リメイク版によっては、竜王のセリフに微細な追加があったり、抱きかかえているドット絵がより精細になっていたりと、細かい部分でアップデートされています。どの機種で遊ぶかによって、少しずつ違った「姫連れ旅」が楽しめるのも魅力ですね。
ドラクエ1で姫を連れたまま遊ぶ真の楽しさ

結局のところ、なぜ私たちはわざわざ苦労してまで姫を連れ回すのでしょうか。それは、与えられた物語をただなぞるだけでなく、「自分だけの物語」を作りたいという欲求があるからだと思います。
「もしもこのまま旅を続けたら?」というプレイヤーの好奇心を、開発者が「バグ」として排除せず、「おたのしみでしたね」というユーモアで返してくれた。この開発者とプレイヤーの「遊び心のキャッチボール」こそが、ドラクエ1が名作として愛され続ける理由なのではないでしょうか。
まだ試したことがない方は、ぜひ一度、ローラ姫と共に世界を巡る「おたのしみ」の旅に出かけてみてください。きっと、いつもとは違う景色が見えてくるはずですよ。
